査定書レビュー・価格セカンドオピニオン

※ 以下は、よくあるご相談内容をもとに構成した想定事例です。
私は、20年ほど前に購入した賃貸アパートを所有しています。
築年数が経過し、今後は外壁や屋上防水、給排水設備などに、まとまった修繕費がかかりそうです。そのため、このまま保有を続けるか、売却するかを考え始めました。
そこで、管理会社を含む複数の不動産会社へ査定を依頼したところ、提示された査定額に大きな開きがありました。
最も高い査定額を提示した会社からは、「この価格で売り出しましょう」と提案されています。しかし、本当にその金額で売却できるのかは分かりません。
別の不動産会社からは、「仲介で買主を探すより、当社が直接買い取れば、早く確実に売却できます」と、買取価格を提示されました。
早く売却できる点は魅力ですが、仲介の査定額よりかなり低いため、この価格を受け入れてよいのか迷っています。
各社から、利回り、収益還元、修繕リスクなどについて説明を受けましたが、査定額の違いが何によるものなのか、十分に理解できません。
売却を依頼する不動産会社とは別の立場から、各社の査定書を読み解き、査定額や買取価格の考え方、売却と保有継続の違いを整理してもらうことはできないでしょうか。
Cさんのように、複数の不動産会社から提示された査定額に大きな開きがあり、どの金額を基準に判断すればよいのか分からないという方は少なくありません。
同じ不動産であっても、
- 査定時に確認した資料
- 現地や建物内部を確認したか
- 想定している買主
- 売却までの想定期間
- 賃料収入や経費の見方
- 将来の修繕費の見込み
- 道路・境界・法令制限などの確認状況
によって、提示される金額は変わります。
また、
- 不動産会社が提示する査定価格
- 実際に販売を始める売出価格
- 一定期間内で成約が見込まれる価格
- 不動産会社が自ら購入する買取価格
- 不動産鑑定士が行う価格等調査や鑑定評価
は、それぞれ目的や性質が異なります。
したがって、最も高い査定額を選べばよいとも、買取価格が低いから不適切であるとも、金額だけでは判断できません。
まずは、査定書の金額だけでなく、
- その金額が何を意味するのか
- 何を調査して算出したのか
- どのような前提条件が付いているのか
- 何が未確認のままなのか
- 最終的な手取りはいくらになるのか
- 保有を続ける場合と比べてどうなのか
を整理する必要があります。
では、Cさんのケースをもとに、順番に確認していきましょう。
一般的な不動産会社の査定とは
不動産会社による査定は、一般に、不動産の売却を検討する際に、売出価格を決めるための参考として行われます。
宅地建物取引業者が、媒介価額について意見を述べる場合には、その根拠を明らかにすることが求められています。根拠としては、価格査定マニュアル、同種の取引事例、その他の合理的な資料などが想定されています。
ただし、不動産会社の査定価格は、その金額で売却できることを保証する価格ではありません。
査定書に記載される金額が、
- 売却できる可能性を検討した査定価格
- 実際に販売を開始する売出価格
- 一定期間内での成約を見込んだ価格
- 不動産会社が買主となる買取価格
のいずれであるかによっても、意味が異なります。
不動産会社の査定には、業界団体等が提供する価格査定マニュアルもありますが、実際に用いられる資料や査定方法は一様ではありません。国土交通省の資料でも、周辺の取引事例や売出価格を参考に各社で推定する方法、公的評価を参考にする方法、各社の査定システム、価格査定マニュアルなど、複数の方法が使われていることが示されています。
机上資料だけで算出する査定もあれば、外観や室内を確認する査定もあります。
一方、不動産会社による査定は、不動産鑑定評価基準のように、すべての査定に共通して適用される法令上の統一的な評価手順や成果物の書式が定められているわけではありません。
そのため、使用する資料、現地確認の有無、個別条件の捉え方、想定売却期間などによって、調査範囲や算定過程、提示される価格に差が生じることがあります。
同じ不動産を同じ時期に査定しても、不動産会社や担当者によって金額に差が生じること自体は、不自然ではありません。
大手不動産会社による査定であっても、会社名や提示金額だけで判断するのではなく、何を確認し、どのような前提で算出した価格なのかを見ることが大切です。
査定書は、金額だけでなく「前提条件」まで確認する
査定書では、査定額や提案価格が大きく表示される一方で、末尾や欄外に重要な前提条件が記載されていることがあります。
たとえば、
- 机上資料だけで査定している
- 建築基準法上の道路に接していることを前提としている
- 境界や越境を確認していない
- 建物内部を確認していない
- 賃貸借契約書を確認していない
- 賃料、面積、築年数等を依頼者から提供された資料から転記している
- 修繕履歴や将来の工事予定を確認していない
- 査定価格と実際の成約価格が異なる可能性がある
といった内容です。
これらは単なる注意書きではありません。
道路、境界、面積、賃貸内容、建物の状態など、価格に影響する重要な事項を未確認のまま算出した査定であることを示している場合があります。
査定書を確認する際には、最終的な金額だけでなく、
- 査定書が全ページ揃っているか
- 対象となる土地・建物を正確に特定しているか
- 使用した資料は何か
- 現地や建物内部を確認したか
- どの取引事例を参考にしたか
- どの程度の売却期間を想定しているか
- 査定の前提条件は何か
- 何が未確認なのか
- 価格を上げる要因と下げる要因が説明されているか
を確認する必要があります。
査定書の一部のページや、査定額だけを抜き出して比較しても、その妥当性を十分に判断することはできません。
まず、提示された金額の意味を確認する
1.査定価格
不動産会社が、周辺の取引事例、現在の売出物件、対象不動産の状態や収益性などをもとに、売却可能性を検討して提示する価格です。
査定価格は、売却を検討するための参考となりますが、その価格での成約を保証するものではありません。
2.売出価格
実際に市場へ売り出す際に設定する価格です。
市場の反応や買主からの価格交渉を見込み、成約を想定する価格より高めに設定することもあります。
3.成約見込価格
一定の売却期間を前提として、実際に買主が現れる可能性を検討した価格です。
査定書の金額が、査定価格なのか、売出価格なのか、成約見込価格なのかを確認する必要があります。
4.買取価格
不動産会社が自ら買主となり、直接購入する価格です。
購入後の修繕費、保有費用、再販売費用、価格変動のリスク、事業利益などが考慮されるため、一般に、仲介による成約見込価格より低くなる傾向があります。
一方で、
- 売却時期を決めやすい
- 買主を探す期間を短縮できる
- 内覧や販売活動の負担を減らせる
- 契約条件によっては、売却後の責任を限定しやすい
といった利点があります。
5.不動産鑑定士による価格等調査・鑑定評価
不動産の鑑定評価とは、不動産の経済価値を判定し、その結果を価額として表示する専門業務です。
不動産鑑定評価基準に則って行う正式な鑑定評価のほか、利用目的や調査範囲に応じて、不動産の価格や賃料を調査する「価格等調査」が行われることもあります。
不動産鑑定士が価格を文書に表示する場合には、正式な不動産鑑定評価書以外の成果物についても、価格等調査ガイドラインに基づき、
- 依頼の目的
- 成果物を利用する人
- 調査の範囲
- 採用した前提条件
- 成果物の利用上の制約
などを明らかにする必要があります。
したがって、不動産会社の査定書と、不動産鑑定士が作成する価格等調査の成果物、不動産鑑定評価書では、目的、調査範囲、作成手順、利用方法が異なります。
収益物件では「粗利回り」だけで判断しない
賃貸アパートや賃貸マンションなどの収益物件では、
- 年間の総賃料収入 ÷ 想定利回り
という方法により、概算の収益価格が示されることがあります。
これは、物件のおおまかな価格水準を把握するうえでは分かりやすい方法です。
しかし、年間の総賃料をそのまま用いる粗利回りだけでは、対象不動産の個別性や、実際に所有者の手元へ残る収益を十分に反映できない場合があります。
確認すべき事項には、次のようなものがあります。
- 現在の入居率
- 空室期間
- 賃料滞納
- 管理委託費
- 清掃費
- 共用部分の光熱費
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料
- 入居者募集費用
- 日常的な修繕費
- 将来の大規模修繕費
- 各賃貸借契約の内容
- 現在賃料と市場賃料との差
- 建物の遵法性
- 土地の形状、接道、建替えの可能性
同じ年間賃料の物件であっても、経費、空室、修繕負担、建物の状態が異なれば、実際の収益も、買主が評価する価格も異なります。
したがって、収益物件の査定書では、単に「利回りが何%か」だけでなく、
- どの賃料収入を前提としているのか
- どのような経費を考慮しているのか
- 空室をどの程度見込んでいるのか
- 将来の修繕費をどのように見ているのか
- 採用した利回りの根拠は何か
を確認する必要があります。
査定額に差が生じる主な理由
不動産会社ごとの査定額に差が生じる主な理由は、次のとおりです。
1.想定する買主や売却期間が異なる
個人投資家、法人投資家、不動産会社、建替えや開発を検討する事業者など、想定する買主によって価格の見方が変わります。
また、短期間での売却を優先するのか、時間をかけて高い価格での成約を目指すのかによっても、査定額は異なります。
2.賃料・経費・空室・修繕費の見方が異なる
年間の総賃料を中心に見るのか、空室や運営経費を差し引いた収益を見るのかによって、価格は変わります。
また、現在の賃料をそのまま将来も得られるものと考えるのか、市場賃料への変更を見込むのか、将来の修繕費をどの程度考慮するのかによっても、査定額に差が生じます。
3.土地・建物の個別条件の捉え方が異なる
次のような対象不動産の個別条件を、どこまで調査し、どのように価格へ反映するかによっても査定額は変わります。
- 接道状況
- 土地の形状
- 境界や越境
- 私道や通路
- 建物の遵法性
- 容積率の余裕
- 建替えの可能性
- 権利関係
- 地域の市場性
査定額を比較するときは、金額だけを並べるのではなく、各社が何を確認し、どのような前提に立っているのかを比較する必要があります。
査定書と一緒に確認したい資料
Cさんのケースでは、主に次の資料を確認します。
1.不動産に関する資料
- 土地・建物の登記事項証明書
- 公図、地積測量図、建物図面
- 建築確認関係資料、検査済証
- 固定資産税課税明細書
- 境界、越境、私道等に関する資料
2.賃貸経営に関する資料
- 賃貸借契約書
- 入居者一覧、賃料一覧
- 入金状況、滞納状況
- 管理委託契約書
- 管理費、清掃費、共用光熱費等の明細
- 入居者募集や空室期間の記録
3.建物管理に関する資料
- 修繕履歴
- 工事見積書
- 点検報告書
- 消防・設備関係資料
- 今後予定される修繕内容
4.売却に関する資料
- 各不動産会社の査定書一式
- 買取提案書
- 媒介契約書の案
- 想定される売却費用
- 各社が示した販売方法と売却期間
これらを確認すると、査定額の差が、物件に対する評価の違いによるものか、調査範囲や売却方法、前提条件の違いによるものかが見えやすくなります。
不動産会社へ確認しておきたい質問
各社へは、単に「なぜこの金額なのですか」と聞くだけでなく、具体的に確認します。
- この金額は、査定価格、売出価格、成約見込価格のどれですか
- どの程度の売却期間を想定していますか
- どのような買主を想定していますか
- 査定の根拠とした取引事例は何ですか
- 現地や建物内部を確認していますか
- どの賃料と経費を前提にしていますか
- 空室や滞納をどのように見込んでいますか
- 将来の修繕費をどのように考慮していますか
- 採用した利回りの根拠は何ですか
- 査定価格を下げる要因として何を見ていますか
- 売却前に必要となる調査や工事はありますか
- 費用を差し引いた後の手取り額はいくらになりますか
- 仲介と買取では、価格以外にどのような違いがありますか
- 売却後に売主が負う責任はどこまでですか
- 現時点で未確認となっている事項は何ですか
説明内容と査定書に記載された前提条件が一致しているかも確認します。
仲介・買取・保有継続を比較する
Cさんの場合、査定額や買取価格だけでなく、次の3つを比較する必要があります。
1.仲介による売却
市場で広く買主を探すため、買取より高い価格で成約できる可能性があります。
一方で、
- 売却期間が確定しない
- 内覧や販売活動が必要になる
- 買主から価格交渉を受けることがある
- 契約条件の調整が必要になる
- 売却前に調査や修繕を求められることがある
といった点があります。
2.不動産会社による買取
売却時期や条件を決めやすく、早期に資金化できる可能性があります。
一方で、再販売費用、修繕費、保有リスク、事業者の利益等が考慮されるため、仲介による成約見込価格より低くなることがあります。
3.保有継続
保有を続ける場合には、
- 今後得られる賃料収入
- 空室や滞納の可能性
- 修繕費
- 管理の手間
- 借入金の返済
- 税負担
- 将来の建替えや解体
- 相続時の負担
などを検討します。
単に「最も高い価格」を探すのではなく、価格、期間、確実性、費用、責任、手間、将来のリスクを総合して判断する必要があります。
税務上の取扱いについては、必要に応じて税理士へ確認します。
「不動産カルテ」と価格検討レポート
株式会社コスモでは、査定書や物件資料をもとに、
- 各社が提示した価格
- 価格の種類
- 査定に使用された資料
- 査定方法
- 査定の前提条件
- 未確認となっている事項
- 査定額に差が生じた理由
- 物件の強みと注意点
- 仲介・買取・保有継続の比較
- 不動産会社へ確認する質問
- 追加で必要となる資料
- 相談先として考えられる専門家
などを「不動産カルテ」に整理します。
さらに、価格の検討をご依頼いただいた場合には、対象不動産の市場性、収益性、権利関係、建物の状態、個別条件等を調査し、考えられる価格帯とその前提条件をまとめた価格検討レポートを作成します。
単に「正しい価格」を一つ示すのではなく、
- どのような条件で
- どの程度の価格が考えられるのか
- 価格が上がる要因と下がる要因は何か
- 何を確認すれば価格判断の精度を高められるのか
を、意思決定の材料として整理します。
株式会社コスモの「査定書レビュー・価格セカンドオピニオン」
株式会社コスモでは、当社への仲介依頼を前提とせず、不動産会社から提示された査定額や買取価格を検討する、
- 「査定書レビュー・価格セカンドオピニオン」
をご用意しています。
査定書の読み解きから、価格帯の検討まで
ステップ1 初回相談・査定書の確認
売却を検討する理由、希望する時期、現在の利用状況、各社から受けた提案について伺います。
査定書、買取提案書、登記、図面、賃貸関係資料などを確認します。
ステップ2 査定書をレビュー
各社の査定書について、
- 対象不動産が正確に特定されているか
- 査定書が全ページ揃っているか
- 使用した資料
- 査定方法
- 参考とした取引事例
- 想定売却期間
- 賃料や経費の前提
- 注記や前提条件
- 未確認事項
を確認します。
この段階では、必ずしも当社が新たな価格を算出するわけではありません。
まず、査定額に差が生じた理由と、不動産会社へ追加で確認すべき事項を整理します。
ステップ3 必要に応じて価格を検討
ご希望に応じて、対象不動産の市場性、収益性、権利関係、建物の状態、地域の取引事例等を調査します。
収益物件の場合には、
- 賃料収入
- 運営経費
- 空室
- 修繕履歴
- 将来の修繕負担
- 採用する利回り
なども確認します。
そのうえで、考えられる価格帯と前提条件を検討します。
ステップ4 仲介・買取・保有継続を比較
価格だけでなく、
- 売却期間
- 売却の確実性
- 売却前に必要となる費用
- 売却後に負う責任
- 最終的な手取り額
- 保有を続ける場合の収益と負担
を比較します。
ステップ5 整理結果を文書でお渡し
確認できた事実、査定額に差が生じた理由、未確認事項、追加で必要となる資料、不動産会社へ確認する質問、考えられる選択肢などを「不動産カルテ」にまとめます。
価格の検討をご依頼いただいた場合には、利用目的、利用者、調査範囲、前提条件等を確認したうえで、価格検討レポートを作成します。
不動産鑑定士による価格等調査では、正式な鑑定評価書以外の成果物についても、依頼目的、利用者、調査範囲等を明確にして業務を行うことが求められています。
今回のまとめ
不動産会社から提示された査定額は、必ずその価格で売却できることを保証するものではありません。
また、買取価格が仲介による査定額より低いからといって、直ちに不適切な価格であるとも限りません。
まずは、
- 提示された金額が何の価格なのか
- どのような資料を確認したのか
- どのような方法で算出したのか
- どのような前提条件があるのか
- 何が未確認となっているのか
- どの程度の売却期間を想定しているのか
- 費用を差し引いた手取りはいくらになるのか
- 保有を続ける場合と比べてどうなのか
を整理することが大切です。
株式会社コスモの代表は、不動産鑑定士として不動産の評価・デューデリジェンスや担保不動産評価に携わってきたほか、不動産売買・賃貸の実務、自社での賃貸不動産の保有・運用も経験しています。
そのため、査定書の金額だけでなく、価格、権利関係、建物の状態、収益性、市場性、売却条件を横断して検討します。
「査定額に大きな開きがあり、どの金額を基準にすればよいか分からない」
「査定書の金額は分かるが、その根拠や前提条件が分からない」
「提示された買取価格を受けてよいか判断できない」
「売却と保有継続のどちらがよいか迷っている」
という段階でも、ご相談いただけます。
まずは、お手元にある査定書、買取提案書、登記、図面、賃貸関係資料などを一緒に確認してみませんか。
[査定書レビュー・価格セカンドオピニオンについて相談する]
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。実際の価格や進め方は、対象不動産の現況、権利関係、市場動向、売却条件等によって異なります。
※価格を表示する成果物については、利用目的、利用者、調査範囲、前提条件等を確認したうえで作成します。
※裁判、税務、金融機関への提出、共有者間の持分売買などにおいて客観的な価格根拠を示す必要がある場合には、用途に応じて、不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価書が必要となることがあります。ご相談の目的を確認したうえで、適切な成果物をご案内します。

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